専利法第四回改正法案が国務院常務会議を通過(2018-12)

    2018年12月5日、国務院常務会議において、科学技術の発展のために重要な役割を果たす知的財産関連政策の一環として、「中華人民共和国専利法改正案(草案)」の通過が決定された。

    草案の全文は公開されていないが、関連報道によれば、草案には、以下の改正項目が含まれる。

1. 侵害行為に対する賠償要求を高め、侵害行為を抑止するために、故意侵害のうち状況が深刻なものに対しては、権利者が受けた損害、侵害者が得た利益又はラインセス料の数倍の額のいずれかに基づいて算出された金額の1~5倍の損害賠償額を決定することができる。また、賠償額の算定が困難な場合に裁判所が状況に基づいて決定するいわゆる法定賠償額を、現行の特許法で規定された一万元以上百万元以下から、十万元以上五百万元以下に引き上げる。

2. 侵害の立証の困難性を克服し、挙証責任を更に完全なものとするため、人民法院は、賠償額の算定にあたり、権利者が既に挙証に尽力し、更に侵害行為に関する帳簿や資料が主に侵害者により保持されている状況下では、侵害者に侵害行為に関する帳簿や資料を提供するよう命じることができ、侵害者が提供しない場合や、虚偽の帳簿や資料を提供した場合には、権利者の主張及び提供した証拠を参考にして賠償額を決定してよい。

3. 国務院専利行政部門は、専利権者又は利害関係人の請求により、全国の重大な影響力を有する専利権侵害事件を処理することができ、専利管理部門は、専利権者又は利害関係人の請求により、専利権侵害事件を処理することができる。また、同一行政区域内の同一の専利権に関する侵害事件は合併して処理することができ、同一の専利権に対する区域を跨った侵害事件は、上級人民政府の専利管理部門に処理を請求することができる。

4. 増加の一方をたどるネットワーク上での専利権侵害について、ネットワークサービス提供事業者が連帯責任を負うことを明確にする。専利権者又は利害関係人が、人民法院の有効な判決、裁定、和解書、或いは専利管理部門発行の侵害行為差し止めの決定書に基づいて、ネットワークサービス提供事業者に侵害製品へのリンクの削除、ブロック、切断等の必要措置を求めた場合、ネットワークサービス提供事業者は、適時に必要措置を取らなかった場合には、連帯責任を負う。

5. 専利権の実施と活用を促進するため、事業体が職務発明に対する処置権を有することが明確にされる。事業体は、職務発明・創造に対する専利権を出願する権利及び専利権を法に基づいて処分することができ、知的財産権の奨励を行い、証券化・先物・配当等の方式で発明者又は設計者にイノベーションによる収益を合理的に分配し、関連する発明創造の実施と活用を促進することができる。

6. 専利権の転用を進めるため、国務院特許行政部門は、専利情報公共サービスシステムを構築し、専利情報の基礎データを提供し、専利情報の伝搬と利用を促進する。国務院特許行政部門、地方人民政府特許管理部門は、同じレベルの関連部門と一緒に措置を講じ、専利公共サービスを増強し、専利権の実施と活用を促進するべきである。

7. 専利開放許諾制度を新設し、専利権者が書面により国務院専利行政部門に自らの専利権の実施を何人にも許諾する旨を声明し、使用料の支払い方式及び基準を明確にした場合、国務院専利行政部門はこれを公開して、開放許諾を行う。何人も、権利者に書面で通知を行い、公告された方式及び基準に従って許諾使用料を支払いさせすれば、専利権の実施許諾を得ることができる。

8. 意匠出願の国内優先権制度を創設し、優先権主張の手続きを改善し、意匠権の保護期間を現行の10年から15年に延長する。

9. 信義誠実の原則及び権利濫用禁止の原則を明確に規定する。

10. 新薬に関する特許権の保護期間補償制度を導入する。

    改正法案は今後、おそらく来年前半に全国人民代表大会常務委員会での審議を経て正式に可決、施行される予定である。



(国家知識産権局ウェブサイトより改編)