技術輸出入管理条例の改正について(2019-03)
2001年から施行されている技術輸出入管理条例について、2019年3月18日に国務院より一部改正が公布され、即日施行された。技術輸出入管理条例とは、外国企業と中国企業との間の特許権又は特許出願をする権利の譲渡契約、特許ライセンス契約、技術上の秘密の譲渡契約、技術サービス契約等の技術輸出入に該当する契約について、契約届け出等の管理上の規則や、国内契約とは異なる法的な義務等を規定したものである。
今回は、このうちの技術輸入契約に関する以下の3つの規定が改正された。
(1)第三者侵害責任の帰属について当事者間で約定可能に
改正前の第24条第3項では、技術輸入契約において提供された技術を使用して第三者の権益を侵害した場合の責任は、当事者間の約定に関係なく、譲渡人(外国企業)が負うべきことが定められていた。そのため、技術輸入行為に該当するような、日本企業から中国企業へのライセンス付与については、提供技術による侵害の責任を日本企業側が負うことを回避するために、中国国内の子会社を通じてライセンスする等の方策が取られていた。
今回の改正では、この第24条第3項が削除された。そのため、今後は、技術輸入に該当する契約においても、提供技術による第三者権益の侵害責任については、中国の国内企業どうしの契約と同様に、契約法第353条の規定に従って処理されることになる。契約法第353条では、提供された技術による第三者権益の侵害責任について、当事者間の約定を優先すると定めている。従って今後は、日本企業から中国企業へのライセンス契約等においても、侵害責任の帰属について当事者間の約定が優先される。
ただし、ライセンス契約等において技術提供側が侵害責任を負わない旨を約定したとしても、契約法第53条の規定により、故意又は重過失により相手に経済的損害を与えたような場合の免責条項は無効とされるため、注意が必要である。
(2)改良技術の帰属が当事者間で約定可能に
改正前の第27条では、技術輸入契約の有効期間内において、改良技術は改良した側に帰属することが規定されていた。この規定の実際の効果としては、外国企業からライセンスを受けた中国企業が当該技術を実施する上で生まれた改良技術は、中国企業に帰属するというものであった。
しかしながら、契約法第354条では、技術譲渡契約において、改良技術の帰属について双方で約定可能な旨が規定されており、上記条例第27条との矛盾が指摘されていた。
今回の改正では、この第27条も削除されたため、今後は技術輸入契約においても、改良技術の帰属について双方で自由に約定可能となった。
(3)制限的条項に関する規定を削除
改正前の第29条では、技術輸入契約に含めてはならない制限的条項について定めていた。具体的には、例えば第1号の「譲受人に技術輸入に必須ではない付帯条件を求めること。必須ではない技術、原材料、製品、設備又はサービスの購入を含む。」などの七種の制限的条項について、技術輸入契約に含めることが禁止されていた。改正では、同条全体が削除された。
第29条が削除された意味としては、同様の内容は契約法、及び独占禁止法において規定されており、今後はそちらの条文に沿って可否を判断するとのことである。
本改正で削除された上記3つの規定は、いずれも技術輸入契約のみに特別に設けられた規定であり、中国企業に技術提供する外国企業にとって、懸念の対象となっていた。今般、これらが削除されたことにより、中国と海外の技術所有者を平等に保護する姿勢が一層明確となった。
また、本条例改正の3日前の2019年3月15日には、同じく国務院において「外商投資法」が通過した。本条例の改正と合わせて、技術及び知的財産領域における内外企業の協力を促進する環境の整備が一層進められたと言える。
(法信ウェブサイトより改編)