最高人民法院知識産権法廷で初の判決言い渡しがなされる(2019-03)
2019年3月27日、最高人民法院は、上訴人厦門盧卡斯汽車配件有限公司(以下、「盧卡斯社」と略称)・厦門富可汽車配件有限公司(以下、「富可社」と略称)と、被上訴人のフランス企業VALEO SYSTEMES D’ ESSUYAGE(以下、「ヴァレオ社」と略称)と、原審被告の陳氏による発明特許権侵害訴訟事件について公開開廷審理を行った。
ヴァレオ社は、「自動車車両用ワイパー用コネクタ及びそれに関連する接続装置」についての中国発明特許の特許権者である。ヴァレオ社は、盧卡斯社及び富可社が未許可のまま製造、販売、販売の申出を行い、陳が製造、販売したワイパー製品が自らの特許権の技術的範囲に属するものであるとし、上海知識産権法院に、盧卡斯社、富可社及び陳に対して①侵害行為の差止め及び②金額600万人民元(損害賠償及び権利侵害を制止するための合理的な費用)の支払いを命じるよう訴訟を提起した。また、ヴァレオ社は訴訟において盧卡斯社、富可社及び陳による侵害行為を直ちに停止させるよう上海知識産権法院に行為保全に関する仮処分申請も提出した。
上海知識産権法院は、2019年1月22日に部分判決を出し、盧卡斯社及び富可社の特許権侵害を認め、侵害行為の差止めを命じた。この部分判決が出されたことによって、仮処分申請についての処分決定は出されなかった。盧卡斯社及び富可社はこれに不服とし、当該判決を取消し、ヴァレオ社の侵害差止めに関する訴訟上の請求を棄却するよう最高人民法院に上訴した。
最高人民法院での裁判において、上訴人と被上訴人は、ワイパーアームとワイパー刷毛体部品との間に存在するのは接続関係か、又は連結関係か、等の問題について争った。最高人民法院知識産権法廷は、審理した上で、被疑製品は特許権の技術的範囲に属するもので、盧卡斯社及び富可社の行為は特許権侵害とみなされるため、侵害差止めの法的責任を負わねばならないものとした。仮処分には特有の価値があり、侵害差止めについて命じた部分判決の効力が生じていない期間においても、仮処分によって即時に強制執行ができるため、特許権者の利益を充分に保護するためには有用である。本件判決は判決言い渡しの形で出されたことから、判決の法的効力は即時に生じ、仮処分決定を出す必要はなくなったため、ヴァレオ社の提出した仮処分申請については支持されなかった。
最高人民法院知識産権法廷は、2019年1月1日に北京で設立され、主に特許などの専門性の高い知的財産権上訴事件を審理している。
(新華社ウェブサイトより改編)