「重大な専利権侵害紛争の行政裁決弁法」の解釈(2021-10)
国家知識産権局は、「重大な専利権侵害紛争の行政裁決弁法」(以下、「裁決弁法」と称する)を2021年5月26日に公布し、本「裁決弁法」は2021年6月1日より施行された。この「裁決弁法」の上位法は「専利法」であり、新「専利法」も同日に正式に施行された。
また、国家知識産権局は「裁決弁法」に関する解釈を2021年10月13日に公布した。「裁決弁法」に関する解釈の主な内容は次の通りである。
「裁決弁法」は27条からなり、重大な専利権侵害紛争の定義、立件条件と資料、証拠調査の権限、検査鑑定の規則、技術調査人の規定、関連する期限、執行と公開及び裁決のその他の手続等の内容について規定されている。
(一)重大な専利権侵害紛争の定義
「裁決弁法」の第3条では、重大な公共利益にかかわるもの、業界の発展に重大な影響を及ぼすもの、省級行政区域にまたがる重大な事件及びその他の重大な影響を及ぼす可能性がある専利権侵害紛争を含む、重大な専利権侵害紛争に該当する状況について明確化されている。
以上の重大な専利権侵害紛争に該当する状況については、省、自治区、直轄市の専利業務を管理する部門によって初歩審査が行われ、関連する証明資料の発行又は請求資料の国家知識産権局への送付がなされる。送付消印日が行政裁決の請求日とされる。国家知識産権局は「裁決弁法」の立件規定に基づいて審査を行い、立件条件に合うものは立件する。重大な専利権侵害紛争に該当しない請求については、国家知識産権局は立件せず、請求人に管轄権のある地方管理専利業務の部門に処理を請求できることを通知する。
(二)立件の条件と資料
「裁決弁法」には、行政裁決の立件は第三条に述べた状況に該当し、かつ次の条件を具備しなければならないものと規定されている。(一)請求人が専利権者又は利害関係者であること。(2)明確な被請求人がいること。(3)明確な請求事項と具体的な事実、理由があること。(四)人民法院が当該専利権侵害紛争について立件していないこと。
「裁決弁法」ではさらに、請求人は請求書及び関連する証拠資料を提出しなければならず、被請求人の所在地や権利侵害の発生地となる省、自治区、直轄市の専利業務管理部門が発行した第3条に述べた状況に該当する証明資料も提出しなければならないものと規定している。
(三)証拠調査の権限
「裁決弁法」では提出した証拠について、「主張する者が挙証する」という原則に従うよう求められており、当事者は自分が提出した主張について証拠を提供する責任があるものとされている。当事者が客観的な原因によって証拠を収集できない場合には、初歩的な証拠と理由を提出し、書面により国家知識産権局に調査又は検査を申請することができる。また、 「裁決弁法」では、調査員が調査あるいは検査する際に行使することができる職権についても規定されている。
(四)検査・鑑定の規則
専利権侵害紛争が複雑な技術問題にかかわり、検査・鑑定を行う必要がある場合、「裁決弁法」では、国家知識産権局は当事者の請求に応じて関係の機関に検査・鑑定を委託することができるものと規定されており、当事者が検査・鑑定を請求する場合、検査・鑑定の機関は当事者双方が協議して確定することができるものと明確化している。また、協議が成り立たない場合は、国家知識産権局が指定するものとしている。検査・鑑定意見は、調べを経ずに事件を認定する根拠としてはみなしてはならないものとした。
鑑定の費用について、契約がある場合はその契約に従うものとし、契約がない場合は、鑑定の費用は鑑定の申請側が先に支払い、結審時に責任を負う者が負担するものとした。
(五)技術調査官に関する規定
「裁決弁法」では、国家知識産権局が技術調査官を派遣して案件処理に参加し、技術調査意見を提出することができることが明確にされた。また、関連技術調査意見の案件における法的地位をさらに明確化し、関連意見は合議組が技術事実を認定する際の参考とすることができるものとした。
(六)期限に関する規定
第一に、立件の期限を明確にした。「専利行政執行方法」を参照し、請求が「専利行政執行方法」の第4条の規定を満たす場合、請求書を受領した日から5営業日以内に立件し、請求人に通知することが明確化された。
第二に、口頭審理通知の期限を明確にした。「裁決弁法」第16条では、口頭審理の時間、場所を当事者に少なくとも5営業日前までに通知しなければならないことが明確にされた。
第三に、事件処理の期限を明確にし、立件日から3ヶ月以内に結審すべきものとした。事件が複雑であったり、その他の原因により、所定の期限内に事件を結審することができない場合、承認を経て、1ヶ月間延長することができることとした。事件が特に複雑であったり、その他の特殊な状況があり、延期しても結審することができず、承認を経て引き続き延期する場合は、同時に延長の合理的な期限を確定すべきであるものとした。
(七)執行と公開
「裁決弁法」第23条では、行政裁決により専利権侵害行為が成立すると認定された場合には、直ちに権利侵害行為を停止するよう命じ、かつ必要に応じて関連する主管部門、地方人民政府の関係部門と協力して速やかに権利侵害行為を制止させなければならないものとした。また、当事者が不服である場合、法に基づき裁判所に提訴することができるものとした。法律に規定された状況を除き、訴訟期間中は行政裁決の執行を中止しないものとした。
行政裁決が下された後には、「政府情報公開条例」及び関連規定に基づき社会に公開しなければならず、商業秘密など公開するのに適さない情報についてはそれを削除してから公開しなければならないものとした。
(八)その他の手続
「裁決弁法」ではさらに、裁決の担当者、立件手続、回避制度、事件の併合処理、口頭審理手続、中止の条件、無効手続との関係、調停手続、執行及び公開、司法救済ルート等についても明確に規定されている。
国家知識産権局より改編