最高人民法院、知的財産権をめぐる懲罰的損害賠償における司法解釈が3月3日より施行(2021-3)
「最高人民法院による知的財産権侵害をめぐる民事事件の審理における懲罰的損害賠償の適用に関する解釈」(以下、「解釈」と称する)が3月3日より公布され、公布日から施行された。
「解釈」では、知的財産権をめぐる民事事件における懲罰的損害賠償の適用範囲、故意や情状が深刻であることの認定、計算基準や倍数の確定等の内容について具体的に規定されている。裁判基準を明確にすることによって、各級法院が懲罰的損害賠償を正確に適用し、深刻な知的財産権の侵害行為を処罰できるよう指導することを目的としている。
「解釈」には以下の3つのポイントがある。
一つ目は、「故意」と「悪意」の関係を明らかにしたことである。民法典は懲罰的損害賠償の主観的構成要件要素を「故意」と規定し、商標法第六十三条第一項、反不正競争法第十七条第三項は「悪意」と規定している。「解釈」の起草過程において、各方面に意見を求め、繰り返し研究した結果、「故意」と「悪意」が示す意味は一致すべきであるとみなした。
二つ目は、情状が深刻であるという認定基準を明確にしたことである。懲罰的損害賠償の構成要件の一つである情状が深刻であるという要件は、主には行為者の手段方法及びそれがもたらした結果などの客観的な面を対象としており、一般的には行為者の主観的状態には関係しないものとした。「解釈」第4条にて規定される「考慮すべき要素」は、主に典型的な判例に由来している。
三つ目は、懲罰的損害賠償基数の計算方法を明確にしたことである。懲罰的損害賠償基数の計算方法について、特許法第71条、著作権法第54条、商標法第63条、反不正競争法第17条、種子法第73条では明確に規定されている。著作権法及び特許法では基数を計算する際の優先順位が規定されていないが、商標法、反不正競争法及び種子法では優先順位が規定されている。また、懲罰的損害賠償に合理的な支出が含まれるか否かについても法律間で一致しない点がある。このため、「解釈」第5条では、「法律に別段の規定がある場合には、その規定に従う」と規定され、事件の類型に従って対応する部門法をそれぞれ適用するものと規定された。
また、侵害を抑制するという懲罰的損害賠償制度の重要な役割を発揮するために、知的財産権裁判の実情に応じて、「解釈」では、原告の主張及び原告より提供された証拠を参照して確定された賠償金額を基数の1つとしている。それと同時に、虚偽の帳簿や資料を提供した場合には、民事訴訟法第111条に基づき法的責任が追及されるものと規定された。
最高人民法院のウェブサイトより改編