最高人民法院が2019年の知的財産権10大事件を発表 (2020-4)

4月26日、最高人民法院は2019年の知的財産権10大事件を公表した。知的財産権10大事件には、行政訴訟と刑事訴訟それぞれ1件と、民事訴訟8件とが含まれる。以下に、そのうちで特に注目に値する、本田技研工業株式会社(以下、本田社とする)と重慶恒勝鑫泰貿易有限公司(以下、恒勝鑫泰社とする)、重慶恒勝グループ有限公司(以下、恒勝グループとする)との間で争われた商標権侵害紛争事件について、簡単に紹介させて頂く。

2016年9月、本田社は、恒勝鑫泰社、恒勝グループがその商標権を侵害していることを理由とし、雲南省德宏タイ族チンポー族自治州中級人民法院(以下、中級人民法院と称する)に訴えを提起し、被告2社が直ちにその商標権侵害行為を停止し、且つ自社の経済的損失300万元を賠償することを命じるよう求めた。被告2社は、その行為がOEM加工であり、権利侵害にならないと主張した。

中級人民法院は、審査を経て、被告2社が本田社の登録商標と同一又は類似する商品において「HONDAKIT」の文字及び図形商標を使用し、且つ「HONDA」の文字部分を突出して使用しているため、原告の登録商標の専用権を侵害していると判断した。これに基づき、中級人民法院は、被告2社が原告の侵害行為を直ちに停止し、原告の経済損失30万元を賠償する旨の判決を下した。

恒勝鑫泰社、及び恒勝グループは一審判決を不服として、2017年に雲南省高級人民法院に上訴した。雲南高級人民法院は、審査を経て、恒勝グループ(恒勝鑫泰社は恒勝グループの子会社である)によるOEM製品の製造行為は、ミャンマーで商標に関する権利を有する者からの合法的な許諾を得ているため、本田社の商標専用権を侵害していない。また、中国商標法は、法律に基づき中国で登録された商標権のみを保護するものであり、本件に係る製品はミャンマーで流通しているため、「HONDAKIT」における「HONDA」部分の文字が突出して使用されたか否か、ミャンマー国内の関連公衆に商品の出処に対する誤認を引き起こさせやすいか否かなどの問題は、中国商標法の評価の範囲外である。従って、雲南高級人民法院は、一審判決を取り消し、本田社の訴訟上の請求を却下した。

本田社は二審判決を不服として、最高裁に再審を請求し、二審判決を取り消し、一審判決を維持するよう求めた。最高裁は、審査を経て、恒勝グループの行為はOEM加工であると認定した。しかし、電子商取引やインターネットの発展により、例えイ号品が国外へ輸出されたとしても、国内市場に還流する可能性も存在する。また、中国経済の発展に伴い、海外にいて旅行や消費を行う中国消費者の人数も多いため、OEM製品の場合でも、中国消費者が接触し、誤認を生じる可能性が存在する。また、恒勝グループは、その製造、販売した被疑侵害オートバイで使用された「HONDAKIT」文字及び図形商標について、「HONDA」の文字部分を大きくし、「KIT」の文字部分を小さくしたとともに、字母「H」と翼状に近い部分に赤色を付しているため、本田社の3つの商標と同一又は類似する商品における類似商標の使用と見なされ、関連公衆の混同と誤認を引き起こす可能性がある。上記の理由に基づき、最高裁は、雲南高級人民法院による二審判決を取り消し、中級人民法院による一審判決を維持する判決を下した。

インターネット時代において中国経済が絶え間なく発展している現状を背景に、本判決では、従来の最高裁の「OEM加工行為は商標権侵害行為とならない」との見解が、「OEM加工も商標権侵害行為になる」へと変更された。この変化は、今後の裁判所の関連事件における判決でも踏襲されることになるだろう。


(中国法院網より改編)