中国初の音商標事件の終審判決が出される(2018‐10)

    北京市高級人民法院は、原告騰訊科技(深)有限公司(テンセント社)(以下、「テンセント社」とする)による被告国家工商行政管理総局商標評審委員会(以下、「商標評審委員会」と略称する)に対する商標登録出願拒絶査定不服審判の審決取消訴訟について、原告テンセント社が出願した音商標「DiDiDiDiDiDi(中国語原文:嘀嘀嘀嘀嘀嘀)」の顕著性を認め、QQのメッセージ受信音(*注)についての登録商標を維持するとの終審判決を下した。

  (注:「QQ」とは、中国でテンセント社が展開するインスタントメッセンジャーのことを指す)

    テンセント社は、2014年5月4日に第38類について音商標「DiDiDiDiDiDi(中国語原文:嘀嘀嘀嘀嘀嘀)」(QQのメッセージ受信音)を出願した(出願第14502527号)。当該商標の指定役務は、インターネット利用のチャットルーム形式による電子掲示板通信、テレビジョン放送、メッセージ(情報)の送信等の10の役務である。テンセント社の上記商標登録出願について、商標局は「出願商標は指定役務について顕著性に欠ける」との理由で拒絶査定を出した。テンセント社は商標評審委員会に不服審判を提出したが、商標評審委員会は、「役務の出所を表示する機能を発揮し難い」ことを理由として、現査定を維持する拒絶査定不服審判審決を出した。

    テンセント社は、商標評審委員会の審決に不服とし、北京知識産権法院に訴訟を提起した。2018年4月、北京知識産権法院は、本件商標の音声は全体的に、指定役務について使用される場合に役務の出所を示す機能を発揮しているものとして、商標評審委員会の審決を取消した。しかし、商標評審委員会はこの第一審判決に不服として、北京市高級人民法院に上訴を提出した。

   北京市高級人民法院は、審理した結果、「DiDiDiDiDiDi(中国語原文:嘀嘀嘀嘀嘀嘀)」の音声は、QQ上での長期的かつ継続的な使用を経て、すでに役務の出所を表示する機能を得ているものとし、北京知識産権法院による「出願商標はQQに関連する役務について商標登録に求められるべき顕著な特徴を備えている」という認定を支持した。

   本事件は、2014年5月1日に新商標法によって音商標が登録出願可能となってから初めて司法判決が出された音商標事件であり、今回の北京市高級人民法院による音商標の顕著性に関する認定は、今後模範的・指導的な役割を果たすものと考えられる。



(法制晩報より改編)