「医薬品特許紛争早期解決メカニズム行政裁決弁法」の解釈(2021-9)

   国家知識産権局は、「医薬品特許紛争早期解決メカニズム行政裁決弁法」(以下、「裁決弁法」という)を2021年7月5日に公布し、公布日から本「裁決弁法」が施行された。

「裁決弁法」は24条からなり、行政裁決の請求主体、裁決可能な医薬品専利の範囲、司法ルートとの調整、行政裁決と無効手続との関係、行政裁決の執行と公開、行政裁決の司法救済及びその他の事件解決手続等の内容について規定している。

(一)行政裁決を請求することができる主体について

  行政裁決を請求する主体、つまり請求人について、「専利法」第76条の規定によると、関連専利の専利権者又は利害関係者及び医薬品の上市許可申請者が請求人となることができるものとされている。利害関係者とは、関連専利の被許諾者又は登録された医薬品の上市許可保有者のことを指す。

(二)行政裁決を請求する期限

 「医薬品専利紛争早期解決メカニズム実施方法(試行)」の関連規定に基づき、専利権者又は利害関係者は国家医薬品審査機構が医薬品の上市許可申請を公開した日から45日以内に、上市許可を申請した医薬品の関連技術方案が関連専利権の保護範囲に入ることを確認する行政裁決請求を提出することができる。

  国家医薬品審査機構が医薬品の上市許可申請を公開した日から45日以内に、専利権者又は利害関係者が当該医薬品専利紛争について人民法院に提訴しなかった場合、又は行政裁決請求を提出しなかった場合、医薬品の上市許可申請者は上市許可を申請した医薬品の関連技術方案が関連専利権の保護範囲に入らないことを確認する行政裁決請求を提出することができる。

(三)行政裁決が可能な医薬品専利の範囲

「裁決弁法」は、裁決可能な医薬品専利は、関連専利情報が既に中国上市医薬品専利情報登録プラットフォームにおいて登録又は公開されており、かつ専利類型が「医薬品専利紛争早期解決メカニズム実施方法(試行)」の関連規定を満たしていなければならないものと規定している。

 関連専利には、化学医薬品(原薬を含まない)の薬物活性成分化合物専利、活性成分を含む薬物組成物専利、医薬用専利、漢方薬の漢方薬組成物専利、漢方薬抽出物専利、医薬用途専利、生物製品の活性成分の配列構造専利、医薬用途専利が含まれる。関連専利には、中間体、代謝産物、結晶型、製造方法、測定方法などの専利は含まれない。

(四)行政裁決ルートと司法ルートの調整

  「裁決弁法」第4条では、行政裁決立件手続は、医薬品の審査・裁決過程において、関連する専利紛争が人民法院で立件されていないことを要求するものと規定されている。同一の専利紛争が既に人民法院によって立件されている場合には、国家知識産権局は当事者が提出した行政裁決請求を受理せず、関連する紛争が行政ルート又は司法ルートのいずれかによってすすめられることを保証することで、紛争解決の手続における浪費及び衝突を回避するものとする。

(五)行政裁決と無効手続との関係

  「裁決弁法」第14条の規定では、医薬品専利紛争行政裁決請求の処理において、係争専利に係る一部の請求項が無効宣告された場合には、国家知識産権局は有効な請求項が維持されていることを基礎として行政裁決を下し、係争専利に係る請求項が全て無効宣告された場合、国家知識産権局は行政裁決請求を棄却するものと規定されている。 また、当事者が事件の処理過程において係争専利について無効宣告請求を提出した場合、「裁決弁法」第16条では、国家知識産権局は事件の処理を中止しないことができるものと明確に規定されている。

(六)行政裁決の執行と公開

  「裁決弁法」では、行政裁決が下された後、当事者に送達し、かつ国務院医薬品監督管理部門に副本を送付し、関連規定に従って社会に公開しなければならないものと規定されている。また、行政裁決を公開する際には、商業秘密に関わる情報について削除しなければならないものとも規定されている。

(七)行政裁決による司法救済

  「裁決弁法」第19条では、当事者が国家知識産権局の下した医薬品専利紛争の行政裁決に不服である場合には、法に基づき人民法院に提訴することができるものと規定されている。「中華人民共和国行政訴訟法」第46条に基づき、行政訴訟は行政裁決書の送達日から6ヶ月以内に提起することができる。

国家知識産権局より改編