復審請求事件及び無効審判事件の2018年十大判例が発表される(2019‐4)

2019年4月26日、国家知識産権局は、2018年度の専利(特許・実用新案・意匠が含まれる)に関する復審請求事件及び無効審判事件の十大判例を発表した。十大判例には、9件の無効審判事件と1件の復審請求事件が含まれている。無効審判は専利権侵害訴訟との関係が深く、通常は専利権侵害訴訟が提起された後、被疑侵害者によって国家知識産権局専利局復審及び無効部(前専利復審委員会)に当該専利の無効審判が請求されている。今回の十大判例においても、無効審判事件が9件含まれており、この点からも権利侵害紛争と関連する無効審判事件が占める比率が高いことが伺える。また、十大判例のうち、5件は特許に関する事件で、4件は実用新案登録に関する事件で、1件が意匠登録に関する事件となっている。

米国クアルコム社と米国アップル社の特許紛争は、中国でも大変注目されたことから、今回の十大判例にあげられている。中国では、2018年から40件以上の特許権について、アップル社からクアルコム社への無効審判請求が提起されたが、十大判例として選出された事件はその内の3件のクアルコム社特許に関するものである。3件の内訳は、グラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)に関する特許(第ZL201310491586.1号)、集積回路構造に関する特許(第ZL201480013124.1号)、及び測位・追跡技術に関する特許(第ZL200880004304.8号)となる。前専利復審委員会は、審理した結果、第ZL201310491586.1号及び第ZL201480013124.1号特許については維持するとの審決を出したが、第ZL200880004304.8号特許については無効にするとの審決を出した。

第ZL201310491586.1号特許の審決では、新規性判断における単独対比の原則を解析して、正確に特許請求の範囲を確定したことから、GUI分野の新規性及び進歩性を評価するためにとても参考となる判例といえる。また、第ZL201480013124.1号特許の審決は、当業者の立場に立って特許請求の範囲を正確に認定したことが、集積回路構造の進歩性判断に指導的な意義を有するものといえる。第ZL200880004304.8号特許の審決も、技術の本質を正確に把握し、技術方案と従来技術との関係を分析した上で従来技術おける示唆の有無を判断したことが今後の進歩性判断に指導的な意義を有するものといえる。

  「電動単輪自転車」発明特許権無効審判請求事件(特許第ZL201110089122.9号)は、秘密審査に関する法律の条文と本国優先権に関する規定における「中国で最初に提出された特許出願」を無効理由として請求された初の無効審判事件である。審決では、秘密審査の法律の条文に明確な解釈がなされ、かつ優先権が成立するかを判断する際の技術方案の対比基準が明らかに示された。審理した結果、本特許権は一部無効となった。

  「グラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)を備えたコンピューター」にかかる意匠無効審判事件(ZL201430324283.6号)は、中国で2014年にGUIを含む物品が意匠登録の保護の対象として認められるようになってから初めてのGUIについての意匠権侵害事件に関連する無効審判事件である。審決では、GUIの意匠保護範囲と類否判断について詳細な分析認定がなされたと同時に、新規性喪失の例外規定等に関連する法律の問題についての理解や適用にも明確な解釈がなされた。審理した結果、本件意匠権は無効となった。

2010年より、専利局復審及び無効審理部は毎年特許復審・無効十大事件を選出しており、社会の注目度が高く、産業に重大な影響をもたらす事件が選出されている。これらの事例は、今後の中国における権利化や審判等の実務において大変参考となるものといえる。



 (国家知識産権局ウェブサイトより改編)